あなたの中の「宝の山」を掘り起こせ
効果的なキャリア・ブランディングを行うたまには、入念な準備作業が必要です。その一つが、「キャリアの棚卸し」です。あなたが書類や口頭で「表現」しなければ、あなたのキャリは存在しないも同じです。そして、「表現」するためには、そもそもあなたの記憶の奥底からキャリアを引っ張り出しておく必要があります。それも、徹底的に。
転職でうまくいかないのは、ほとんどの人の棚卸し作業が「圧倒的に」足りないからです。そして、その理由には大きく3つの種類があります。
一つ目は、「自分にはどうせ大したアピール材料がない」という「諦め」や「割り切り」によるものであります。学歴も職歴も平凡で特別なものは何もないので、とりあえず書けそうなことだけ書いて、あとは応募活動をがんばるしかないと考えている人が多いのです。
ふたつ目はそれとは正反対に、「自分ならそんな語らなくても評価してもらえる」という驕りから、そこそこの準備作業で十分と考えてしまうタイプで、特に大手企業出身に散見されます。
でも、棚卸しの重要性はキャリアの優劣によって何も変わりません。なぜなら、転職活動とは本当の場合、「自分と類似のキャリアのライバルとの競争」だからです。
あなたのキャリアがそれほど優れたものでなかったとすれば、ライバルとの競争に勝つために入念な準備が必要なことは言うまでもないでしょう。
でも、、あなたのキャリアがとても優秀なものだったとしても、あなたの転職で目指すようなポジションは、同じようなジャンルがとても優秀なものだったとしても、あなたが転職で目指すようなポジションは、同じようなジャンルで優秀なキャリアを積んだライバルとの競争になります。
そこではハイレベルな競争があなたを待ち受けており、そこで勝ち抜くためには、やはりライバルよりも入念な準備作業が必要です。したがって、キャリアが優秀であろうとなかろうと、入念な棚卸しの重要性に何ら違いはないのです。
なお、一般的には一流大学や一流企業の出身者がキャリア評価上有利になることは事実ですが、その「ブランド」も無敵ではありません。即戦力を中途採用する際には「学歴」よりも「職歴」 の方が、重要視されますし、「職歴」よりもさらに重要なのは、「職務経験・実績」です。
つまり、「どこで働いた」よりも「どこでどんな働きをしたか」ということがより重要であり、一流企業出身者が常に有利とは限りません。
大きな企業・組織の中でしか経験できないことはたくさんあり、そこで優れた成果を挙げていれば鬼に金棒ですが、優秀な人材がひしめいているが故に、経験領域・レベルが限定される側面もあります。
中小企業は人材も資金も限られるからこそ、幅広い業務を経験できたり、早くから責任のある立場に抜擢されたりすることもあり得ます。たとえ小さな企業・組織でも、そこで頑張って良い仕事をしていれば、評価される材料はたくさん見つけられます。
棚卸し作業が不足する3つの理由は、「何をどのように棚卸しすれば良いのかよくわからない」というものです。長いキャリアを振り返って効率的なアピール材料を拾い上げていくことは、「やり方」を知らないければ難しいものです。
強みを活かす転職戦略の策定
効果的なキャリア・ブランディングを行うための準備作業はふたつ目は、適切な「転職戦略」です。別な表現をすれば「ターゲットを決める」ことであり、「ターゲット」が決まって初めて、自分の強みを活かし、また効果的なアピールをすることが可能になります。転職市場には、実は様々な領域の求人需要があります。どの領域を目指すのかは本人の自由ですが、どんなに優秀な人でも、間違った領域を選ぶと転職活動の成果は途端に上がらなくなります。
極端な話、経理一筋20年のベテラン経理マンが未経験の営業職に転職しようとしたら、そのキャリア評価はゼロに近くなってしまいます。「そんな人はいないでしょう」と思うかもしれませんが、実際これに近い転職活動をしたいと相談される人はかなりいます。
「未経験で任せてもらえばやれる自信がある」と言う人は少なくないですし、実際にできるかもしれません。でも、採用前にそれを証明することはとても困難です。応募側の「やりたい」「やれる」と、採用側の「採りたい」「任せたい」の間には、果てしない距離があるのです。
また、仮に運よく採用されたとしても、年齢に見合った収入を得ることはほぼ不可能であり、新人に毛の生えたレベルの待遇を覚悟する必要があります。「転職活動が長引いても構わない」「給料が激減しても構わない」と言う人以外は、過去のキャリアから離れ流のではなく、過去のキャリアが最大限活かせる「土俵」で転職活動を行うべきです。
「土俵」の最もわかりやすいカテゴリーは、「業界」および「職種」です。なるべく早期かつ良い条件で転職したいなら、これまでと「同じ業界」「同じ職種」への転職活動を行うのが近道ですが、「業界」と「職種」では、「職種」を買えないことが圧倒的に重要です。
職種によっては業界の違いがさほど問題にならないこともありますが、逆に業界が同じであっても、経験が乏しい別の職種に転職することはかなり困難です。
大別すれば同じカテゴリーの職種であっても、少しの違いでキャリア評価が全く違ってしまうケースもあります。たとえば、同じプログラマーと言う職種でも、必要とされる言語を習得していなければ、採用の可能性は一気に低くなります。
このように「隣接領域」でも転職の成功可能性は大きく減ってしまうのですから、経験領域の中で勝負することがいかに重要かわかるでしょう。
これまでの経験領域で勝負するとしても、同じ領域を専門としているライバルはたくさんいるのですから、当然、その中で競争を勝ち抜かなければなりません。「自分の土俵で戦う」と言うのは転職を成功させるための十分条件ではなく、あくまでも必要条件なのです。
ただ、何回も転職しても複数の業界や職種を経験している人は、可能性のある複数の経験領域に対して並行して応募していくべきか、判断に悩むかもしれません。このテーマは微妙な問題であり、最終的には本人の考え次第ではありますが、原則としては「ターゲット領域はなるべく一つに絞るべき」でしょう。
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