【転職したい幹部自衛官の思考】参謀役が果たすべき3つの役割

下記は、「戦略参謀の仕事――プロフェッショナル人材になる79のアドバイス」からの一部抜粋です。

トップの意思決定の精度を上げ、マネジメントをサポートし、かつ組織の業務精度を高めるという観点からとらえると参謀役の基本的な役割は、大きく分けて次の3つになります。

◼️プランニングの起点は五感を通して事業実態につい手の情報

1つ目が「トップの意思決定の精度を上げるための事業方針に関する現状分析と起案」です。これはトップの意思決定、判断の精度を上げるために、事業運営や事業そのものについての現況分析(必要な情報の収集と、そこからの意味合いの抽出)と企画、提言を行う役割です。

仕事柄、企業の経営会議に同席する機会は多いのですが、「この資料でトップに意思決定を迫るのは、あまりに酷だ」と思った場面には、結構な頻度で遭遇します。トップの「エイヤ〜!」という博打のような意思決定。起案者の顔を覗き込み、「(お前を)信用して良いだな」と心で訴えながらの気合の決裁を頻繁に強いる会議は、事業規模が大きくなるほど危険が伴うことになり、好ましい状態ではありません。

参謀は、過去や現状について上手な「見える化」を進め、ことの因果を解きほぐし、取るべき方向性を検討できる状態をつくります。そして必要に応じて、会社や事業の方針の企画、戦略の立案などを行います。

これを行うために参謀役は、分析や「見える化」の技術や作法、そして社内外のスタッフに的確に指示できる知識や能力を、必要最低限のレベルは習得しておく必要があります。

現場からの情報の流れを正しいものに整えていくためにお、顧客に価値を提供する現場で何が起きているかを、原体験として分かっていなければなりません。結局、全てのプランニングの起点は、ロジックを論じる前段階の、五感も含めて得られる事業の肌感覚であり、その上でプランナーの頭の中に描かれるイメージなのです。

◼️思考の流れの「見える化」は、「理」にかなわない判断の横行を食い止める

参謀の2つめが、「社内の「神経系統」づくり」です。これは、市場や社内の実態に着いての情報が経営層にまで適切に共有さてるとともに、経営の意思を各部署に展開するための指示・報告系統が正しく機能し、さらに各部署が自律的に判断して動ける状態を作り上げる仕事です。

一般的に、年度の事業方針、部門方針のとりまとめは経営企画や経営管理室が行います。しかし、単に計画をとりまとめて数字の整合性を取るだけではなく、各マネージャーが自身の組織内でPDCAを健全にまわさせ、組織が挑戦を通じて、言語化された「学び」を続けている状態を作らなねばなりません。

その際の鍵になるのが、報告や会議で使われる帳票の書式です。各部門の成果の検証C(check)と企画P(Planning)のための発表用帳票フォームや、報告の場となる会議の設計が行われますが、まさにここでは、その巧拙が表れます。

「帳票の設計」と称して報告フォームだけを作って、さっさと配っているスタッフをよく見かけ「書きにくい」「枠組みの作りがアバウトすぎて、何を書いていいのかわからない」「書式内の因果の流れがおかしい」などのことが起きるものです。

現場からの改善を求める声を握りつぶして、「私は正しくフォームを設計した。それをちゃんと書いてこないマネージャーのレベルが低い」などと現場のせいにするのは「自分は常に正しいと思うがゆえに、どの案件においても自分は間違っていないというスタンスに立つ傾向」を起こしている典型的な状態です。

ここでの「参謀」役のミッションは、「(それらしい)帳票を設計する」ことではなく、「マネージャーが帳票を使ってPDCAを廻し、組織全体が学習を積み重ねる状態をつくる」ことです。帳票は、結果である過去や現状の検証Cから次の企画Pにつなげる、思考の流れを「見える化」するためのものです。

・読み通りの結果になったかどうかに着いての、事実の適切な「見える化」
・読みと結果の差から読む、意味合いの抽出
・必要に応じて、さらなる分析と深掘り
・検証Cからの学習ポイントの明確化と、修正された次のP、あるいは次のPのための押さえどころ

です。

◼️事業規模が大きくなるにつれて、意思決定の制度は下がるもの

そして3つ目の役割が「課題の優先順位付けと課題プロジェクトへの対応」です。これは、新規のITシステム導入や物流対策など、トップ視点にて捉えて取り組むべき、様々な経営課題を明らかにすること、そして必要に応じた特命プロジェクトへと対応です。

企業には、大事故につながる品質問題など、予期していなかった突発的な出来事への対処が必要になることがあり、そこではトップと同じ目線を持ったものによる対応が必要になります。

それ以外にも、人事制度の企画やマーチャンダイジングの分析や管理など、本来、求められる制度を実現するための新しい情報システムの構築や導入、大型投資案件や企業買収、物流体制の整備、効率化など、様々な経営課題への対応が必要になります。

トヨタの今の強みも、トップの素で合理的な生産の考え方とノウハウの躾を現場に浸透させていった大野耐一という実践的な参謀役の活躍の賜物と言えます。

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