「あなたが仕事で得た専門性は何ですか」と質問されたら、瞬時にはっきりと答えることができるでしょうか。これからは、公務員も自分の専門性を強く意識する必要があります。
ゼネラリストからスペシャリストへ
これまで公務員はゼネラリストでなければならないと言われてきました。国家公務員の総合職採用の職員は、少なくとも2、3年に1回の異動を繰り返し、専門力よりも総合力を求められてきました。自治体では、国家公務員よりも異動サイクルは長めですが、福祉部門を担当していた職員が農業部門に異動するなど、異動の幅が広いのが特徴で専門家が育ちにくい環境があります。
確かに、若いうちはいろんな経験も必要でしょうし、幹部になれば専門性よりも管理能力や幅広い視座の方が重要になる場面もあります。
それでもなお、これからは、公務員も専門性を重視する時代になっていくことは間違いありません。市民ニーズや地域課題の専門化に応える力が一層強く求められるからです。
例えば、発達障害に関する医学的な知見の集積や常識の変化についていくには、大変高い専門性が必要になります。専門家と議論し、具体的な自治体の取り組みを進める人材になるには、同じポジションに数年配置することが望ましいのです。
また、行政課題に対応するため、外部から専門家を呼んでくることも増えますが、外部の専門家と議論し、その内容を理解できる職員はますます必要となります。こういうチャンスを逃さないためにも、自ら専門性を身につけようと貪欲に学び、行動する姿勢が職員に求められます。
専門性はどの部署でも学べる
一方で、「自分には専門性がない」「どうやって専門性を身につければ良いのか」と慌てることは必要ありません。そもそも専門性とは特定の限られた分野のものではなく、役所のすべての部署で必要となるものです。逆に言えば、どの部署に配属されても学ぶでき、また、身に着けるべき専門性が存在します。専門性を意識して研鑽し、仕事に取り組めば、専門性は誰でも、いつからでも身に着けることが可能です。
税の知識はどの部署に異動しても重要な知見になりますし、生活保護を担当すれば生活困窮者に関係する様々な制度に詳しくなります。
窓口業務も、市民とのコミュニケーションスキルを磨き、ITやAIを活用して業務効率化を進めるような取り組みを実現できれば、自ずと専門性は身についていくはずです。
特に、制度上、市町村の権限や義務の強化された時や、新しい課題に役所組織を挙げて取り組むようなタイミングは、重要な専門性を見つけるチャンスでもあります。新しい課題や制度については組織に専門家がほとんどいませんから、若手が専門性を身に着けて活躍する余地が大いにあるのです。
10年で激変する! 「公務員の未来」予想図