「追い出し部屋」の本当の問題
日本を代表する大企業の「追い出し部屋」問題が、取り沙汰されている。「事業・人材強化センター」(パナソニック)、「人財部付」(ベネッセ)、「キャリアステーション室」(ソニー)、「プロジェクト支援センター」(NEC)・・・「追い出し部屋」とは、希望退職者への応募を断った社員、会社にいても仕事がない。社内失業者、低迷している部署の社員といったリストラ対象者を集め、まともな仕事を与えずに置いて、自ら辞めるように仕向けるために設置された部署のことだ。
厚生労働省はパナソニック、シャープ、ソニー、NEC、朝日生命保険の5社を調査し、「明らかに違法と考えられる退職強要の事案は確認されなかった」と下が、2012年8月には東京地裁立川支部でベネッセの「追い出し部屋」を違法とする判決も出ています。
それぞれのケースで様々な理由があり、同列に非難はできないが、不当な解雇や、単に退職に追い込むための嫌がらせがあったとすれば、もちろん問題です。
だが、社員を「追い出し部屋」に送り込んで平気でいられる社長や経営幹部がそのまま居残っている会社こそ問題です。
「平均点」の仕事をしていたら会社が倒れる
たとえば、ある営業マンが、自分の担当エリアで新しいお客さんを開拓せず、前任者と同じお客さんを回って同じくらいの注文をとり、「平均点」の仕事を続けていたとすると、必ず会社の売り上げは下がってきます。同業他社や異なる業態のライバル企業が入ってきて、顧客を奪われてしまうからです。つまり「平均点」=「昨日と同じ成績」であり、相対的に見れば徐々に下がって「落第点」になっていく訳で、それを取っているだけの「平均的な社員」は給料が上がる理由がないのである。
仕事というのは、自分で見つけて、自分なりのやり方に変えていくものです。上司が「A」と言ったら、「A+B」の仕事をこなさなければなりません。
Aをやらなかったら上司に文句を言われるから、最初はAの仕事をやらざるを得ない。だが、Aに加えて自分のやり方で新しくBの仕事をやらざるを得ない。だが、Aに加えて自分のやり方で新しくBの仕事を創り、結果を出して初めて価値が出てくるのです。
営業マンが担当エリアを持たされた場合であれば、最初のうちは仕事や取引先を覚えるために前任者のやり方を踏襲しないといけないかもしれません。だが、その後、仕事の効率を上げて前任者を超えられなかったら、業績が落ちて会社は傾いてしまうのです。
自分は今、会社に利益をもたらしているのか?もたらしていないとすれば、どうやって稼げばいいのか?新たな仕事を提案すべきではないか?そういう問題意識を、一人一人が持たなくてはならないのです。
「追い出し部屋」の是非以前に、そんな基本的なことすら社員に教育できていなかった会社だからこそ、今頃になって「追い出し部屋」なるものを作らざるを得なくなっている・・・そう考える方が正しいのです。
2030年にも生き残れるスキルとは?
このところ「10年後」をキーワードにしたビジネス書が話題になっていますが、ここではもう少し長い「2030年に生き残れるスキル」を考えてみる。2030年と言えば、2013年に22から23歳で社会に出た新入社員が40歳になるわけですが、その頃にはおそらく「稼げる人」と「稼げない人」が二極化していると考えられます。
2030年に生き残れるグローバル人材になるためには、大きく分けて二つのスキルが必要になります。
一つは「ハードスキル」です。具体的には会計、財務、マーケティング理論、統計学などビジネスで必要とされる「道具」です。たとえば、企業価値が何通りもの方法で計算したり、いくつかのマーケットの中で最も成功する可能性が高いセグメントをデータから導き出したり、顧客をクラスター分析しながら最も利益率の高い商品を売ったりする技術です。
そのような統計を使った処理は日本の大学でも企業でもほとんど教えていないため、日本人が苦手な分野となっています。
もう一つは「ソフトスキル」です。前出の三つの問いがまさにそれであり、民族・国籍・文化・言語・宗教の違う人たちとコミュニケーションを取りながら、ビジネスを円滑に進める能力を指し、もちろん英語力が前提となります。
挨拶や説得のほかにも「海外で現地社員を叱責する」「外国人社員とミーティングでプロジェクトの進行状況を確認し、誰がいつまでに何をやるかを全員にコミットさせる」「労働問題が起きた時に弁護士に依頼し、解決策を共有する」など様々なケースに柔軟かつ的確に対応できなければならない。
結局、グローバル企業として成功するためには、社員一人一人がどこまで自分の能力を高められるかにかかっています。
稼ぐ力: 「仕事がなくなる」時代の新しい働き方