19世紀の国際法
19世紀の国際法では、主権国家が他の主権国家に対して武力行使することそれ自体は違法ではありません。もちろん、当時の国際法でも、「武力行使やりたい放題」という訳ではありません。奇襲攻撃、捕虜の虐待、民間人の虐殺などは国際法違反とされていました。ただ、きちんと宣戦布告の手続きを踏み、戦時国際法のルールを守りさえすれば、武力行使それ自体は適法とされていたのです。
このため、植民地の獲得、借金の回収、資源の獲得、軍事的優位を維持するための先制攻撃など、様々な目的で武力が行使されました。
ここで、「戦争」という用語について確認します。日常用語として使われる場合、「戦争」という言葉は、広く人と人との争いを意味します。「受験戦争」とか「クリスマスは百貨店にとって戦争だ」と行った使い方のように、身近な争いや非常事態を指すこともあります。
他方、法律用語としての「戦争」は、「相手国が自国や他国を侵略していない状況でなされる、宣戦布告を経た武力行使」という意味で使われることが多いです。現代の国際法では、侵略をしていない国にこちらから手を出すタイプの武力行使は全て違法ですから、「戦争」は一切許されません。
政府は、2015年安保法制のことを「戦争法案」と呼ばれるのは嫌がりましたが、それも、この法制が国際法違反の「戦争」を正当化するものではなかったからです。
これに対し、「武力行使」という言葉は、「戦争」よりも広く、「ある国が他の国に対して実力を行使すること」を意味します。「戦争」もその一種ですが、自分の国が攻撃された場合の自衛措置なども含まれています。
自衛隊と憲法──これからの改憲論議のために (犀の教室)