公務員の終身雇用が必ず崩壊する理由
最近は、採用面接で「身分が安定7エルから公務員を目指します」という受験生はいなくなりました。しかし今でも、公務員を志望する主な理由の1つに「安定した身分保障」を挙げる人は少なくありません。確かに、地方公務員法第27条第2項には「職員は、この法律で定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、もしくは免職されず(後略)」という身分保障に関する規定があります。
しかし、民間企業が厳しい経済環境、国際競争にさらされる中、公務員だけがいつまでも終身雇用や身分保障に守られるはずがありません。
私は公務員の終身雇用はこの15年くらいを目途に崩壊すると見ていますが、それにはいくつかの理由があります。
第一に、単純にそれだけ多くの公務員を雇用し続けることができない財政状況になることです。人口減少や行政課題の多様化などに伴い、自治体の財政状況は厳しくなります。
その中で、新卒で採用した人材に対して、「40年先ま君たち全員を必ず雇用し続けます」と断言することができません。
第二に、AIやITの普及や外部委託の増加により、職員がやるべき業務が大きく減少することです。窓口業務など定型作業をAIが行うようになれば、適正な職員数が今と大きく変わります。全職員の終身雇用を維持することができないのです。
第三に、今後の急激な社会変化や市民ニーズの多様化・専門化に対応するには、プロジェクトごとに外部から専門家が登用する必要があるからです。
新卒で採用したプロパー職員を40年近く全員雇用し続けるのではなく、課題に応じて職員を一定割合入れ替えていく「流動的」「弾力的」な組織運営が不可欠になります。
年功序列はこうして崩れる
実際に、すでに職員採用に社会人経験枠を設けたり、年齢制限を撤廃するなど、より多様な人材を求める動きはすでに始まっています。法令で定められた仕事をミスなく遂行するには自治体組織の同質性が大きな武器となっていましたが、地方創生時代に新しい挑戦が求められる今、年齢に関係なく地域に付加価値をもたらすことのできる職員を抜擢したり、中途採用などによる多様な視点を組織に持ち込んだりして、過度な同質性はあえて崩していくことがどうしても必要になるのです。
また、終身雇用制度が崩壊するのですから、年功序列制度はもっと早期に見直されるはずです。これまでの自治体業務は、法令改正や国の新しい方針などに伴い、一定の変化はあったものの、ベテラン職員の経験がものをいう業務の割合がかなり高かったいいえます。
法令の執行業務や国からの依頼を大過なくこなす「減点主義」の業務が多かったからです。しかし、時代は変わり、国が自ら「地方創生」を声高叫ぶ現在、自治体が地域課題を地域のリソースを活用して解決する「加点主義」の業務が確実に増えます。
そうなると、これまで自治体がやってこなかった新しい分野の取り組みをどんどんつくることとなるので、ベテラン職員の知見が役に立たないケースが増えてくるのです。
それどころか、むしろ若い職員の前例にとらわれない感性の方が効果的な取り組みをつくり出せる場合も多く、また、前述のように、専門性の高いプロジェクトの期間だけ外部から公務員として招き、働いてもらうという雇用形態も増えるはずです。
したがって、人柄や高度のマネジメント能力を活かし、若手職員や外部人材の力を効果的に引き出せるベテラン職員は昇格し続けるものの、そうではい場合は、むしろ若手や中堅にしかるべき役職を任せたり、外部人材に相応のポストを用意して召喚することも考えなければ、これからの自治体はやっていけないのです。
逆説的になりますが、公務員は、制度的に安定した地位を保障されているからこそ、それを土台に新しい挑戦をし、現場を飛び出して、地域を活性化していく使命があると考えるべきなのです。
そして、そのように挑戦した職員だけが、将来、終身雇用制度が崩壊した時も組織や地域から求められる人材となるのです。
10年で激変する! 「公務員の未来」予想図